カテゴリー: 落書き

『文体の舵をとれ』練習問題p73(トレリド子育て時空OCによる語り)

練習問題③長短どちらも
問1:一段落(200~300文字)の語りを、十五字前後の文を並べて執筆すること。不完全な断片文は使用不可。各文には主語(主部)と述語(述部)が必須。
(『文体の舵をとれ』アーシュラ・K・ル=グウィン p73より引用)

この時空のトレリドです。


部屋にはエディスだけだった。僕は確かに話し声を聞いたのに。妹は「妖精と話してたの」と笑った。僕は「そうなんだ」と信じられなかった。当然、妖精族はツイステッドワンダーランドのあちこちにいる。エースさんは妖精の女王に手品を見せたことがあるらしい。僕もその話を聞いたことがある。それでも鈴の音は僕の耳には聞こえなかった。妖精たちは僕に姿を見せてはくれなかった。鈴の声の妖精たちは人間の常識の外側の存在だ。そうした存在に、僕は馴染むことができなかった。僕が妖精たちを信じていないから。妖精たちもきっと僕を信じてくれない。でも僕は変わりたいと思っていた。僕は「そうだろうね」と言いたかった。「いつか僕にも妖精の鈴の声が聞こえるかな」そう聞くと茨の谷から来た人は憮然として言った。「あれはお前が思うほど素晴らしいものではないが……」