メギド72/サレオス×ネフィリム
「いつもお部屋で何して遊んでるんですか?」
問われてサレオスは、ギョッとしてあたりを見舞わす。アジトのホール、誰もいないのは偶然だろう。スコルベノトの質問は、人目を避けたものではなかった。
「すまん、何のことだ?」
「えっ、だからその、ネフィリムさんのお部屋で何してるのかなーって」
一応とぼけてみるも、よくお泊まりしてますよね?と続けてくる。抜けているようで、案外目ざといようだ。アジトに自室というものを持たないサレオスは、以前まではその都度適当な部屋に泊まっていた。だが最近はネフィリムの部屋に寝泊まりしていることが多い。ただ同じ部屋で寝るだけだった頃から、出入りするところを誰にも見られないよう気を付けていたつもりだったのだが。
「……俺がネフィリムの部屋で寝泊まりしてるって、誰かに言ったか?」
「なんでですか?」
「あんまり知られたくないんだよ」
「えっ?どうしてですか?」
サレオスは頭を抱えた。ヴィータの営みに疎い上、察するということをしないスコルベノトを納得させるのは難しい。
いっそ何をしてるのか洗いざらい話してしまって、合意の上なら何も恥ずかしいことはないのだとぶちまけた方が楽かもしれない。勿論そんなことはしないが。
軍団内でそういうことをする関係になっているのは自分たちだけではないはずだ。うっすらと思い当たるのが何組かいる。だが、それを開けっ広げにしているやつはいない。なぜか、と考えればそれは知られたら面倒なことになるからだ。その煩わしさというのは、根の無い感覚的なものやヴィータとして生活するなかで形成した観念のようなもの、その他諸々が複雑に入り交じっている。ような気がする。
「とにかく、誰にも言うなよ。できれば忘れてくれ」
「ボク、エーコちゃんとおうちのなかでできる遊びが知りたかっただけなんですけど……」
「わかったわかった。そんなのいくらでも教えてやるから」
説明して納得させることができないのなら、少々不誠実でもはぐらかすしかない。ヴィータ社会で生活している以上、いつかはスコルベノトにもそういった知識が必要になることはあるだろう。しかしそれを教えるのは今でなくていい。
しかし、ヴィータの子供が室内でするような遊びは全然知らない。図書室を漁るか、川を渡る客に聞いてみるしかないだろうな、とサレオスは溜め息をついた。
***
「ね~ェ! ネフィリムはサレオスと最近どうなの?」
「サレオスさんですか……? 最近はよく一緒に寝てます」
「えーっ!? 寝てるって、それってもしかしてぇ……!」
「?」
「ちょっとゼパル、ただ一緒に寝てるだけの可能性もあるでしょ、この子のことだから」
「……? ああ、セックスならしてますよ」
「ちょっ、セッ……!? 嘘ォ~!」
「ねえ、そういうこと、あんまり正直に言わない方がいいカモ。聞いておいてなんだけど」
「え……? でも、特別仲の良い小さい人同士が普通にすることだって、皆さんが……」
「言ったけど! 言ったけどさあ~! 正直に言わなくてもいいんだよーっ!」
「普通にすることだけど、二人だけのことだしィ~」
「そうそう! 『ヒミツ!』でいいんだって! もっかい言ってみよっか!」
「サレオスと最近どうなの?」
「えっと……ヒミツ……です」
「いいカンジ! なんかかわいい~!」
「二人だけのヒミツ……ってなんだか甘酸っぱ~い!」
「ヒミツ……秘密を誰かと持つのって、初めてかもしれません」
「この間の、壺でメギド飼ってたっていう事件くらい?」
「一人きりで隠そうとするのと、二人だけでナイショにするのって違うよねえ……………………ところでサレオスって、“そういうの”興味無さそうーって思ってたから、ちょっと意外かも」
「サーヤもそう思ってた~! 淡白そうな顔して、実は結構激しいタイプだったり? どうなの? ネフィリム?」
「えっ!? な、何ですか!?」
「ヒミツにしないとォ、こうやって勝手に想像されちゃうかもしれないんだよ?」
「う……それはちょっと、嫌、かもしれません」
「にヒヒ、嫌なことしてゴメンね?」
「もう……」