空想下手

ニンジャスレイヤー/ネヴァーモア×チバ

 

ラオモト・チバの精神は、空想を楽しむには些か老成しすぎてしまった。意識をぼんやりと遠くへ飛ばす時間すらも惜しんで机に向かい経済を転がすことを疑問に思ったことはない。つまり、そもそも彼は空想というのがどういうものなのかしたことがないので知らなかったのだ。先のことを読む能力はビジネスマンには不可欠なので、想定や予測をすることはできる。しかし、起こりもしないことに対して、そうだとわかりきっているのに思考を割くというのがどうにも解せず、ついブレーキをかけてしまう。
「ネヴァーモア」
「ハイ」
「お前は……いや、何でもない」
ネヴァーモアは怪訝な顔はしなかったが、その眼の中には何だったのだろうという純粋な疑問が見え、すぐに消えた。後にはこれまた純粋なチバへの感情のみが残る。
「僕は休む。四時間後に起こしに来い」
「ハイ」
襖が閉じたのを確認してから、チバは瞼を閉じた。ゆっくりと眠りの中へ落ちていくニューロンでチバは空想をしてみた。四時間後、部屋へ入ってきたネヴァーモアが、そのチバへの感情を発露させ、何らかのアクションを起こしたなら、一体どうなるだろう。自分は一体どう対応するだろう。
これでは空想じゃなく妄想だ、とチバは少し笑いそうになった。