性癖:〘 名詞 〙 生まれつきの性質。また、性質上のかたより。くせ。 (コトバンク:精選版 日本国語大辞典より) でも、今回に関してはフェチ的な意味で使います。
【ルール】 ★1~8までの番号を添えて、キャラ名またはCP名をリクエストしてね (CPはできれば私が書いたことあるやつで) ★新書ページメーカー1ページ前後でなんか書くよ ★スケベはないよ ★ちょっと時間がかかるかも 許してね
1.リミナルスペース→デイヴィス・クルーウェル
デイヴィス・クルーウェルは一人、見知らぬカーディーラーに立っていた。ピカピカに磨かれた窓ガラスの外は夜。見通そうとしても、ただ、整ったかんばせが映るだけだ。スポットライトに照らされた車のどれにも見覚えはない。美しいとは思うものの、少し目を離せば忘れてしまいそうで、クラシックカーマニアとしての自負がある身としてそんな己を珍しく思った。スタイリッシュな応接ソファに腰かけて誰かが来るのを待とうと思ったが、それは無意味だ、ここに用はない、と直感が告げていた。やがて長い脚をライトに照らされていない暗闇へ向けると、暗がりにあるスタッフ用のドアに手をかけた。
デイヴィス・クルーウェルは一人、見知らぬイベントホールに立っていた。黒々とした空間に、一本のランウェイだけが白く光っている。高い天井を見上げるとわざとむき出しにされた薄汚い銀色の配管が縦横無尽に走っていて、めまいがした。モデルと服がここを通ることはけしてないだろう。またしても直感があった。ランウェイに背を向けて、暗がりへと歩いていく。やがてほとんど真っ暗な中に壁を見つけると、左手で伝いながら出口を探した。
デイヴィス・クルーウェルは一人、見知らぬ学校の廊下に立っていた。学校だ、ということはわかる。ありふれたタイル敷きの床に、あまり触りたくならないざらざらとした壁。生徒たちの声は聞こえてこない。
「誰か」
とうとうクルーウェルは声を張った。
「誰かいないか」
さっきから通りすぎる空間には、“意味”が欠落している。クルーウェルは冷静な男だが、その物寂しさを楽しめる性分ではなかった。
——ウォン、ウォォン……
どこかから犬の鳴き声がして、クルーウェルは心底安堵した。