窓はあけて出ていけ - 1/4

ツイステッドワンダーランド/トレイ・クローバー×リドル・ローズハート

※子育てをしているトレリドです。捏造された子供に名前と人格があり、喋ります。
※直接的な描写はありませんが、男性も妊娠・出産が可能な世界です。
※「飛び去る翅の下で」と同一時空になります。

自分たちと全然タイプの違う子供たちを育てている数十年後のトレリドです。今回はほとんど末っ子とおばあ様のお話です。
イメソンはアドベンチャー・タイムの『Everything Stays』。
大丈夫な方のみお読みください。

 

「365日の三食全てが“美味しい”でなければいけないということはないと思っているんです」

——それは今回刊行された本にも登場したフレーズですよね。そう考えるに至ったエピソードなどはありますか?

「そうですね……うちは父二人が、ほぼ均等に分担して食事を作っていました。二人には、料理の腕前に子供の私がわかる程度には差があったんです。便宜上、上手い方を父A、それほどでもない方を父Bとしましょうか。
父Bが極端に下手だったとかダメだったとかではなくて。父Aが上手すぎたのと、父Bがちょっとだけ不器用だったんですね。慎重になりすぎて手際が悪くなったり、しっかり火を通そうとして焦がしたり、味の調節が苦手で基本的には薄味だったりとか。
でも私や姉兄、それになんと言っても父Aは、父Bの作る食事も父Aの作る食事も大好きだったんです。では、“美味しい”って何なのだろうと子供心に考えていた時に、祖母の料理に出会ったんです」

——おばあ様の、“美味しくない”料理に?

「はい。料理を評価する尺度が、ごく狭い“美味しい”だけだなんて、そっちの方が寂しいと思うんです。だから、“美味しい”の幅を広げるか、“美味しい”以外の尺度を増やしていきたいと思っていて。でも、やっぱり美味しくないものは美味しくない。美味しくないけど価値あるものが、勝手に“美味しい”を期待されて不当な観点からの評価を受けるくらいなら、私がやるべきは“美味しい”以外の尺度を豊かにすることだと思ったのです」